
こんなに優しい空気があるのだろうか。
音を弾くもの、
音を調整するものが重なると、
あの美しい世界が作り出される。
宮下奈都さん作品の「羊と鋼の森」は、2015年9月11日に発売されたあと2016年本屋大賞の大賞作品に選ばれたことで一気に人気が上がりました。
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サイト管理人のMira.Buleと申します。
2018年6月に山崎賢人さん主演で映画化もされました。
今回は小説を話を紹介したいと思います。
私自身映画を見に行ったので「読む」ことと「映像」で感じた違いも書いていきたいと思います。
山崎賢人さんが演じた外村(とむら)は、ピアノを弾くこともできないし音楽の知識が豊富だったわけでもない。
そんな彼がなぜピアノ調律師になり悩み、成長しようと努力したのか?
それにはタイトルにある森が深く関わっていたのです。それでは詳しく見ていきましょう。
今回は以下のような内容でご紹介しています。
羊と鋼の森でタイトルが示す重要性
羊と鋼の森でタイトルの重みと努力の大切さ
羊と鋼の森タイトルで感じた静かな時間
個人的な本の感想そして作品の内容を詳しく書いています。
あくまでも参考程度にご覧ください。
目次
羊と鋼の森タイトルが示す重要性
こんな世界があったんだと思わせる世界観。
都会の中では感じられない
静かな時間が流れる空間。
進む道に迷った時はもう一度森を感じたい。
羊と鋼の森でピアノ調律師「板鳥」との出会い
主人公である外村(とむら)は、ある日高校の体育館にあるピアノの調整にきたピアノ調律師の板鳥に出会います。
そこで調律されたピアノの音色を聞くと、森の景色が浮かび、まるで森の匂いがした錯覚を覚えました。
それは生まれ育った北海道の豊かな自然が生みだす匂いだったのです。
調律師という仕事に「森」を感じた外村は、これが自分の進む道と確信しました。
高校を出ても特にやりたいこともなく目的もなかった彼が、調律師になるため家族を説得して東京の専門学校へ行くことを決意。
そして再び北海道に戻り、板鳥のいる江頭楽器店に就職しました。
外村が幼い頃に過ごした大自然の中には様々な「音」が存在しました。
羊と鋼の森タイトルはピアノそのものを表していた
タイトルである羊と鋼の森の意味を紐解いていくと・・・
羊は、
ピアノの弦を叩くためのハンマーについてる圧縮されたフェルトが羊毛です。
鋼は、
ピアノの弦のことです。
そして森は、
ピアノの材質である木材のことです。
つまり鋼と森を組み合わせてピアノだったんですね。
そして羊がいることで調律師は、ピアノと向き合えるということです。
タイトルだけみるとなんの話か正直よくわかりませんでしたが、意味を知ると納得でしたね。
羊と鋼の森タイトルの重みと努力の大切さ
真面目な性格ゆえに早く成長したいと思う。
だからこそ壁は高い。
迷い込んだらなかなか出口は見つからない。
でもそれは自分でしか見つけることができない。
羊と鋼の森に登場する調律師は根気が必要
外村は早く立派な調律師になりたくて、仕事の後には調律の練習をし普段からクラシックを聴くなど努力をします。
調律師としては右も左も分からない外村は、同じ江頭楽器店で働く先輩調律師の柳や元ピアニストで耳が良い秋野からもたくさん学びました。
ただ、なかなか自分が思い描く音を出すことができません。
ピアノが弾けるわけでもなく音楽の素質もない。
耳もたいして良いわけではない。
でもそんな自分の今の現状を受け入れることにしました。
才能という言葉で紛らわせてはいけない。あきらめる口実に使うわけにはいかない。経験や、訓練や、努力や、知恵、機転、根気、そして情熱。才能が足りないなら、そういうもので置き換えよう。
羊と鋼の森より
そんな外村を見た板鳥から、
「焦ってはいけません。こつこつ、こつこつです。」
と言われます。
その言葉を聞いて焦る必要はないんだと気付かされます。
羊と鋼の森で調律師としての分岐点
ようやく補助としてですが、先輩と一緒に家庭を回れるようになり、ピアノそして様々な持ち主に出会いました。
そこで今後を左右する双子の女子高生姉の和音(かずね)と、妹の由仁(ゆに)に出会います。
外見はそっくりでも奏でる音色はまったく違いました。
ある日ひょんなことから、まだ調律師になって5ヶ月の外村が双子の2人のピアノの調律をすることになります。
調子が悪いところを直すことはできますが、お客さんの希望の音を出すという腕ははまだありません。
でも力になりたい一心でチャレンジします。
ところが繊細な調律はまだ難しく、状態を悪くしてしまい自信をなくしました。
失敗して落ち込んだ彼は板鳥に、
「どんな音を目指していますか?」
と質問しました。
すると原民喜(はらたみき)の言葉を引用して、この言葉が目指す音だと言います。
「明るく静かな澄んで懐かしい文体、少しは甘えているようでありながら、きびしく深いものを湛えている文体、夢のように美しいが現実のように確かな文体」
それが調律師としての自分が理想とする姿なのだと聞き、そこからさまざまな葛藤と失敗を繰り返しながらも外村は成長していきます。
羊と鋼の森タイトルで感じた静かな時間
一筋の道は間違いなく存在した。
見つけた時に人は大きく見える。
胸を張ることができる。
森はいつも自分のそばにいてくれたんだと実感する。
羊と鋼の森で文字の表現力がすごい
作品の特徴である描写は、ピアノをやっていなくてもピアノの音をイメージできます。
しかも人物それぞれ音が違うので表現力には本当に驚かされました。
さらに凄いのは映画を見た私としては、やっぱり音と映像の方がピアノの世界を表現しやすいと思い込んでいました。
ところが小説では繊細な表現力が読み手それぞれの感性で物語を想像できるので、無限にイメージすることができました。
そしてキーワードとして森の存在があります。
主人公の心は常に森とリンクしています。
まるで私たちも、実際に森の中に立っているかのような印象を感じとることがでします。
羊と鋼の森でようやく見つけた森の先の道
物語はただ静かに時間が流れます。
そんな中板鳥に同行したコンサートの調律で価値観が変わります。
それは家庭用の調律しかしたことのない外村にとって、感じたことのない広い会場での音はまさに目指す森の先の音でした。
ようやく本当に目指す夢が見つかりました。
そして双子の姉和音もピアニストを目指し、妹の由仁は姉のピアノを調律するために調教師を目指すという夢を見つけました。
この物語の最後には、外村の心に森の景色が広がり光が差し込んだ瞬間があります。
時間がかかっても、まわり道になっても、この道を行けばいい。 何もないと思っていた森で、なんでもない風景の中に、すべてがあったのだと思う。 隠されていたのではなく、ただ見つけられなかっただけだ。 安心してよかったのだ。僕には何もなくても、美しいものも、音楽も、もともと世界に溶けている。
羊と鋼の森より
物語の全てと、人生において役に立つ言葉でしたね。
映画も小説も読んで感じたのは、ピアノの世界と調律師の繊細さです。
主人公の外村の不器用さ、そして優しく見守る周囲の人物を見ていると自分の心も洗われました。
本当に美しく優しい時間が流れる本でした。
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以上、
「羊と鋼の森」というタイトルはピアノそのものを表現している?でした。
このページを最後までご覧いただきまして、ありがとうございました。